- TOP
- 店舗検索
- 福島県
- 会津若松市
- やさしい手 訪問看護かえりえ北青木
- 看護・介護の事例一覧
- 「自宅で過ごしたい」ダブルストーマを持つがん患者の在宅生活を支える看護小規模多機能型居宅介護の取り組み

「自宅で過ごしたい」ダブルストーマを持つがん患者の在宅生活を支える看護小規模多機能型居宅介護の取り組み
2025.06.15
利用者プロフィール
年齢・性別: 70代後半 男性
疾患: がん(消化器系)、ダブルストーマ造設
医療処置: 右鎖骨下CVポートからの連日点滴投与(エルネオパ)、ストーマケア
ADL: 自立歩行可能、基本的な日常生活動作は自立
生活環境: 息子2人と同居(日中は息子は仕事で不在)
利用開始前の状況
A様は消化器系のがんにより入院し、手術によりダブルストーマ(回腸ストーマと結腸ストーマ)を造設されました。経口摂取だけでは容易に脱水となるため退院後も継続的な点滴治療が必要な状態でしたが、「最期は家がいい」という強い希望をお持ちでした。しかし医療処置が多く、特にストーマケアと点滴管理が必要なため、自宅での生活に不安がありました。
退院直後は看護小規模多機能へ宿泊され24時間サービスによる対応が可能な状態でした。その頃はストーマからの排液が多く、1日に15回程度のパウチ内容物の破棄が必要でした。また、点滴の閉塞アラームへの対応や、水分バランスの管理など、医療的なケアが多く必要な状態でした。
看護小規模多機能型居宅介護の支援内容
1. 医療的ケアの提供
・点滴管理: CVポートからの点滴(エルネオパ)を毎日実施
・ストーマケア: 定期的なパウチ交換、皮膚トラブルの早期発見・対応
・バイタルサイン管理: 脱水傾向や体調変化の早期発見
2. 生活支援
・入浴支援: 週2回のシャワー浴介助、ストーマ周囲の洗浄
・水分摂取の管理: 脱水予防のための適切な水分摂取の促し
・歩行訓練: 施設内での自主的な歩行運動の見守り
3. 緊急時の対応
・ストーマトラブル時の対応: パウチ漏れ時の緊急訪問
・点滴アラーム時の対応: 閉塞アラーム発生時の訪問対応
・体調変化時の医療機関との連携: 発熱時など状態変化時の医療機関への連絡調整
4. 精神的サポート
・不安の傾聴: 医療処置や今後の生活に対する不安の傾聴
・自己効力感の向上: 自己管理できる部分を増やし、自信を持てるよう支援
支援の経過と変化
初期(利用開始〜1週間)
利用開始直後は環境の変化に戸惑いがありましたが、看護師による丁寧なストーマケアと点滴管理により、医療面での安心感が得られました。「病院よりもゆっくりできていい」と話されるようになり、施設での生活にも徐々に慣れていきました。
中期(2週間〜3週間)
自主的に施設内で歩行訓練を行うなど、活動性が向上しました。ストーマケアについても、自分でパウチ内の排液を適切なタイミングで破棄できるようになり、皮膚トラブルも改善傾向に向かいました。水分摂取の重要性を理解し、「ポカリは塩分があって上手い」と積極的に水分を摂るようになりました。
後期(4週間〜)
「自宅で過ごしたい」という希望が強くなり、看護師と相談しながら一時帰宅を試みるようになりました。点滴のアラーム対応にも慣れ、自宅での生活に自信を持てるようになってきました。「点滴を2本にすることも検討中」という医師の言葉に「入院したらもう戻ってこれないと思うな。でも、俺だって最後は家がいいぞ」と自分の希望をはっきりと表現できるようになりました。
約5カ月の間は毎日の訪問看護と看護小規模多機能を利用し自宅を主とした生活を過ごされた後、病状の進行により状態悪化があり入院されご逝去されました。
成果
・医療的ケアの安定: ストーマ周囲の皮膚トラブルが改善し、点滴管理も安定
・QOLの向上: 施設内での歩行運動や自分のペースでの生活により活動性が向上
・自己管理能力の向上: ストーマケアや水分摂取の自己管理ができるようになり自信を回復
・在宅生活への移行: 看護小規模多機能型居宅介護の支援を通じて自宅生活が実現
まとめ
A様のケースは、医療依存度の高い方でも、看護小規模多機能型居宅介護のサービスを利用することで、安心して在宅生活を送ることができる可能性を示しています。特に、看護師による専門的な医療ケアと、生活全般をサポートする多機能なサービスの組み合わせが、A様の「最期は家で過ごしたい」という希望の実現に向けて大きな支えとなりました。
医療処置が必要な方でも、適切な支援があれば、自分らしい生活を送ることができます。看護小規模多機能型居宅介護は、そうした方々の「自宅で過ごしたい」という願いを叶えるための重要な選択肢となっています。