はじめに
「家族に迷惑をかけないように生活したい」「自分らしく生活したい」年齢を重ねてもこのように考える方は多いものです。しかし、病気により医療的な処置が必要になってくると、自分だけでの対処が難しくなる場合があります。
今回取り上げさせていただくY様は胆管がん末期であり、入院中に中心静脈栄養
※を実施されています。退院後も病気の管理や医療的な処置が必要とされました。そこで医療的な管理を受けながら、安心して自分らしく生活できる【やさしえ中津】にご入居されました。これまでの経過をご紹介します。
※中心静脈栄養とは
中心静脈栄養とは「高カロリー輸液」とも呼ばれ、心臓に近い太い血管の中心静脈から高濃度の栄養の輸液(点滴)を投与する治療法です。栄養状態が悪い方や、長期間食事からの栄養がとれないと予測される場合に用いられ、体に必要な栄養を24時間かけて投与します。近年は、「CVポート」という皮膚の下に埋め込まれた小さな機器に、輸液をつないで実施されることが増えています。在宅での実施が可能ですが、医療的な管理が必要です。
事例紹介
Y様(男性)
年 齢 |
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90歳 |
主な病名 |
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胆管がん末期・胃がん手術後・慢性心不全・慢性心房細動・脳梗塞 |
要介護度 |
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要介護4 |
家族構成 |
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長男(別居)、長女(別居) |
導入サービス |
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訪問看護、訪問介護、訪問入浴、訪問診療、福祉用具貸与 |
●療養上の課題と目標
Y様の課題に対し、目標・サービス内容を計画し、実施しています。
《生活全般のニーズ》苦しまずに安心して生活したい・不自由なく自分らしく生活したい
療養上の課題 |
短期目標 |
サービス内容 |
胆管がん末期で、胃がんの手術歴や脳梗塞の既往もあるため、体調の変化が起こりやすい |
◆痛みや苦痛が緩和され、安楽に過ごせる
◆栄養状態を保てる
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・全身状態の確認を行う
◆病気の管理を行う(中心静脈栄養の管理、内服薬の管理、排便管理)など
◆食事摂取状況の観察
◆排便コントロール
◆医師との連携をはかる
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身の回りのことが自分でできず、介助が必要である |
介護や家事の支援を受け、不自由なく過ごせる |
◆入浴の支援(訪問入浴)
◆排泄の介助を行う
◆トイレやリビングへの移動の介助、見守りを行う
◆掃除、洗濯の支援を行う
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体力や筋力の低下により、転倒の可能性がある |
転倒・転落なく過ごせる |
◆移動時は見守りを行う
◆ベッド周囲の環境を整える(ベッド、エアマット、車椅子、歩行器、杖)
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予後の不安がある |
Y様、ご家族様が思いを表出できる |
◆訪問時はお話を傾聴する
◆対処できることはすみやかに対処する
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●入居までの経過
胃がんや脳梗塞を発症されたことがあり、病気の管理をしながらご自宅で過ごされていましたが、令和5年の春頃から状態が悪化し入院。食事での栄養確保が難しい状態であったため、中心静脈栄養が行われています。状態が改善し退院予定とはなりましたが、体調確認や中心静脈栄養を継続する必要がありました。そこで、訪問診療や訪問看護を受けられる当住宅にご入居されました。
医師からは、今後以下の可能性があると説明を受けています。
◆発熱、腹痛
◆黄疸、体のだるさ、むくみ、食欲不振
◆便秘
◆全身の苦痛、呼吸苦
これらを注意深く観察していくこととし、サービス事業所間でも共有しています。
●ご入居後の経過
ご入居時から現在までの体や心の状態についてお伝えさせていただきます。
1.体の状態
ご入居後は発熱や痛みはなく、血圧や呼吸状態は安定されています。入居当初は中心静脈栄養が必要であったため、看護師で管理・実施しました。全身状態や食事摂取量の確認を行い、医師やサービス事業所との連携に努めています。入院中は食事での栄養が十分にとれない状況でしたが、ご入居後は食事摂取量が増えています。なるべくお好きな物を摂取していただけるよう食事の工夫をし、栄養の確保に努めました。食事摂取量の増加やY様のご希望もあり、8月2日から中心静脈栄養は中止となっています。現在のところ7〜8割程度の摂取量です。今後も食事で栄養がとれるよう、Y様のご希望をうかがいながら食事の提供や確認を行ってまいります。
Y様のお腹には、胆汁の流出を改善するための管が留置されています。定期的な交換のため、8月23日に入院、8月26日に退院されました。退院後も、大きな体調の変化はなく過ごされています。腹痛や吐き気、食欲不振が起こりやすい状態であるため、注意深く確認を行っております。
2.心の状態
ご入居当初は中心静脈栄養が行われていたため、「退院したのに、こんなことをしなければならないのか」と話されることもありました。私たちはその都度Y様の思いを傾聴いたしました。中止後は精神的にも落ち着かれたご様子です。ご家族様は毎日訪問されております。Y様の大きな支えとなっており、散歩や家事などのサポートをされています。Y様、ご家族様ともに笑顔が見られ、良い時間を過ごされているご様子です。
Y様は「できることは自分で行いたい」という思いを強くお持ちです。生活に関わる動作が安全に行えるよう、動作の見守りや介助、環境整備を行いました。安全にトイレまで行けるように導線を確保し、夜間はポータブルトイレを設置しています。リハビリに対しても非常に前向きであるため、安全に歩行訓練ができるよう、見守りや声がけを行っています。
●今後について
Y様は現在比較的おだやかに過ごされています。しかし病状の急変や、全身状態の悪化が予測される状態です。訪問診療や訪問看護、訪問介護など関係機関と連携をとり、Y様のケアを行っていきます。また、Y様やご家族様の不安をうかがいながら、苦痛なく過ごせるよう支援する計画です。今後もY様、ご家族様が安心して生活できるようにスタッフ一同で支援してまいります。
やさしえ中津の安心ポイント
●医療的管理が必要な方のご入居が可能
やさしえ中津では、医療的な管理が必要な方のご入居も可能です。病状に合わせて訪問診療や訪問看護サービスを利用できます。体調に異常が見られた際は、看護師が病院やクリニックに連絡し対応いたしますので、病状に不安がある方も安心してお過ごしいただけます。
●居心地の良い住空間
プライバシーに配慮したバリアフリー設計のお部屋で、ご自宅と同じように生活していただけます。自由な時間を楽しみ、ご自分のペースでゆったりと。ご家族との時間を気兼ねなく過ごしていただけるので、ご入居様・ご家族様双方にご満足いただいております。
施設の入所を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。